栗東トンネル西坑口 + 周辺空間デザイン / tunnel entrance design / 日本道路公団
栗東トンネル西坑口周辺は県立自然公園に指定され、松・杉を主体とする山林が広がっている。ここでは、その山林を切り開いて新しく造られる高速道路空間をただ通すだけでなく、高速道路を建設することを契機として、本線に沿った空間をより豊かな、一つの流れるようなシークエンスの空間として形づくることを考えている。そのために、坑口のみならずその前後に四季折々に様々な豊かな表情を見せる落葉広葉樹を本線沿いに植栽し連続的にデザインをすることで、坑口へと導かれる一体的なランドスケープを形成することを考えている。
坑口付近は、背後の法面を地山に連続させた緩い勾配とし、坑口自体も法面にそって最小限の構造体しか見えないものとしている。そのため坑口からトンネル内部へは、内部と外部の境界を緩やかで長い緩衝区間となっている。前面にのびてきた法面に吸い込まれるような穴が空いているようなデザインである。小口は内側に削り構造体としての存在感を和らげ、伝統的な素地風の信楽焼のタイルを貼ることで、山にくりぬかれた土の内部に見える。
本線植裁計画は、大津JCTの中央分離帯が広がり始める付近から、坑口までの約1kmを一つの連続した走行空間としての機能を持った区間として考え、坑口に至るまの導入空間として、よりスムーズで、同時に次の展開への期待を高め、アメニティのある、自然四季の変化を感じられる走行空間として考える。具体的には、周囲の杉・林の針葉樹の比較的印象の暗い山々をバックに、2種類の落葉樹を本線と平行にストライプ状に植裁し、1kmのシークエンスとしての連続性をつくると同時に、土を削る、盛るなどの土木作業による地形の変化を可視化している。