祖師谷中橋 / pedestrian bridge design / 世田谷区
この橋は東京・世田谷区の住宅地を流れる仙川の上に架かる。世田谷区で計画された「仙川6橋の橋作りプロジェクト」の一つだ。私を含む異分野5人の専門家からなるチームのフィールドワークから始まった。行政サイドの都合により、ステュディオ・ハン設計済みの後続の橋は実現を見なかった。与条件として、PCコンクリートの桁が設定された。密集した住宅地域のたたずまいに仰々しいデザインやモニュメント性は似合わないので、橋全体で存在感を感じさせるものではなく、個性的なデティールを散りばめた軽やかなデザインとした。
左岸側の抜け道から時計台の家を曲がり、川沿いに出る。と、それを受けとめる格好で中橋のガラスブロックのアーチが迎えてくれる。もし、にわか雨が降ったなら、雨宿りする人にその懐を貸してくれるだろう。
こちら左岸側の橋詰の半円状のスペースがアプローチとなって橋の歩道に続く。敷き詰められた自然な肌合いの煉瓦は雨のあとの濡れ色も美しい。堅いアスファルトに慣れた足の裏には、少々の凹凸と柔らかな弾力はかえって新鮮で心地好い。この道が時を経てなめらかな起伏を見せる時、それはまた人の軌跡を物語るだろう。
高欄は今までの、平行、均一、シンメトリーな転落防止柵の無愛想なイメージから解放され、橋上に軽やかで自由な風の流れを予感させる動きのあるもので、その様々な表情と相まって、橋空間の拡がりを感じさせる。その色彩は、空の色、木々の緑、周囲の家並み、歩道の煉瓦色との調和と対比のバランスを考慮されている。
右岸上流側には自然の樹の立ち姿をいかした照明燈が、直線的な高欄を受ける形で立っている。この樹は、素材へのいつくしみをもって手入れされる事を前提として選ばれたものだ。
住宅地の中の15mの小さな橋は、橋梁としては取るに足りないものかもしれない。しかし、住宅密集地の中で川を望め、空を見上げることのできる場所、解放区として位置づけるならばその役割は大きい。
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