Sensorial Dynamics / installation / Schloss Solitude in Stuttgart, Germany
この世紀末、際限なく拡張された身体機能を獲得したメガロポリスの住人は、もはやメディアという神経網からなるインヴィジブルスーツ無しには生き残れない。加速度的に進化を迫られ不可逆的に相対化される身体。それは個人レベルで社会レベルで、文字通りヒューマンスケールの意味を無化し続ける。そこで個人は、リアルタイムの生産-消費ライン上の様々なデータに過ぎない。主格不在のまま繰り広げられる、未来永却終わりの無い進歩史というナイト-メア。

<vehicle> 
自動車のダイメンションは、最大限のリアルな拡張身体器官であると同時に、最小限の居住環境である。すなわち主と客、内界と外界の臨界点である。その速度は、時空間を歪め、その超越的動力の引き起こす昂揚感は快楽と死の恐怖を同時に体感させる。外界に対して閉じたカプセル状の形態と構造は、密室の親密さと母胎にも形容される安心感を用意する。
<installation>
消えゆく自然に代わる次世代の人工的-自然環境(現実の模倣を免れない範囲のVRではなく)とは?両極である創造と破壊のエネルギーとを統合した概念、絶対的存在としてNatureを読み直す。透明なイリュージョンー高密度化する表象・記号の大気ーに覆われた都市。刺激と消費のストレスのなかで肥厚した人間の知覚・感覚をひらくことで、一個の身体をトータルに意識させ、そのダイナミズムを蘇生する。

<observer> 
速度のなかで不動点となった目撃者。ツーシーターの二人。

<location> 
Schloss Solitude Stuttgart,1995 : かつて18世紀に、ひとの住むまちと異界である森とを隔てる境界点であった場所。或いは、王の居城と丘上の狩猟、饗宴、愛の快楽のためのヴィラとを直結させた、権力-速度の象徴である道の軸線上の終点で。
Tokyo, until 2000 : アメーバーのように増殖し繁茂するメガロポリスのカオスの森の
中、80年代に、天井知らずの経済の虚像を象徴するかのように垂直に天を目指して伸びる高層ビルの屋上ヘリポートで。